表題番号:2019C-553 日付:2020/04/10
研究課題異常な動的構造を示す電荷移動液晶
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 多辺 由佳
研究成果概要
電子吸引性の液晶化合物と中性の液晶化合物を同比率で混合すると、混合液晶がSmE相やSmB相などの高秩序液晶相を示すことがある。本研究で我々は、電子吸引性の液晶化合物に1割以下の割合で中性分子を混合したとき、混合液晶の静的構造は変わらないにもかかわらず、動的物性が大きく変化することを見出した。中性分子の割合が小さいとき、混合液晶は母物質と同じく二次元液体的なSmA相を示す。静的構造は同じだが、混合液晶を1ミクロン程度の厚さの薄膜にして酸素を透過させると、中性分子のモル比が0.05を超えたところで、酸素透過率が急に1桁低下した。さらにこの薄膜を破壊すると、破壊の進む速さが同じ閾値で、不連続に2桁低下した。可能性として、混合液晶のSmA相には高秩序相のナノドメインが高速で生消滅しており、静的には同じ相であっても、固いナノドメインが分子の動きを阻害し、粘性を大きく増大させていることが考えられる。マイクロ秒以下で生消滅する100nm以下の小さなクラスターの存在を、マクロな実験で明らかにした。