表題番号:2019C-508 日付:2020/04/03
研究課題民衆文化としてのロシア修道聖人伝の史的展開に関する研究-ロシア人の死生観への展望
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 三浦 清美
研究成果概要

本研究は、中世ロシア聖人伝文学をロシア民衆文化の所産として捉え直し、種々の奇跡、幻視、悪魔との戦いの物語など、「この世」と「超越界(天上界、異界、神の世界)」との境界にある諸エプソードを題材に、ロシア人の死生観を歴史的に展望するという目的をもっていた。「この世」と「超越界」の接点としての奇跡譚という観点から、『キエフ洞窟修道院聖者列伝』(13世紀初頭)と、この補助金の期間中に翻訳を完成させた『セルギイ伝』(14世紀末)を比較した結果、次のことがわかった。前者が聖者の生活の実態よりもキリスト教文化の説話の型により忠実であるのにたいして、後者は聖者セルギイの人格により近い実話が多く集められている。