表題番号:2019C-497 日付:2020/04/09
研究課題法の継受と法の支配の確立
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 准教授 郭 舜
研究成果概要
本研究は、日本における法の支配の脆弱性の原因を、法律専門家の間における法の支配の理念の未確立に見出されることを明らかにすることを目的とした。従来、日本における法の支配の課題は社会における前近代的な法意識の近代化にあるとする見方が支配的であった。確かに、川島武宜ら先達は、近代的な法観念になじまない社会的な慣習の残存を明らかにしてきた。しかし、それのみが日本社会に法の支配が定着していないことを示すのではない。奥平康弘らの研究によれば、戦前において治安維持法が次第にその適用対象を拡大していくにあたり、法律専門家であるはずの裁判官はほとんど何らの抵抗も示さなかった。もちろん、戦前の裁判官が司法省の下に置かれていたという事情も加味する必要があるが、重要な背景として法の内在的な制約原理が共有されず、法の目的論的解釈が横行したことが着目される。これを、ナチス体制下のドイツと比較することで、日本における法の支配に現代にも通ずる問題性が存することを明らかにした。