表題番号:2019C-474 日付:2020/03/17
研究課題最高裁判例における立法事実論の批判的検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 笹田 栄司
研究成果概要
判例の「制度準拠思考」は立法裁量を広く認め、その統制に際し「立法事実の変化」と「総合的な考察」を結びつけるが、このやり方にについては学説上は批判が強い。制度の合理性を担保する立法事実論の検討にあたり、違憲審査制受容プロセスを見るなら、薬事法違憲判決(最大判昭和50・4・30)がその先駆といえる。この判決では、議員立法のため立法事実が被告(県知事)から提出されず、最高裁による立法事実の確定がポイントであった。調査官解説は、ドイツ連邦憲法裁判所1958年判決が「本判決に影響を与えた」と述べるが、立法事実論の先駆者である時国康夫はアメリカ法の影響を指摘している。このように見ていくと、憲法裁判における立法事実の認定手法は司法裁判所と憲法裁判所で異なるのか、あるいは憲法裁判においては一般的事実が肝要であるため共通に論じられるのか、という次の検討課題が浮かび上がる。