表題番号:2019C-305 日付:2020/04/05
研究課題憲法と刑法の交錯領域としての刑事立法論に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 仲道 祐樹
研究成果概要
 本研究課題では、従来「刑法の基本原則」と呼ばれてきた各原理(特に、犯罪は行為でなければならないとする「行為主義」と、行為者の意思決定によらない行為は罰しないとする「責任主義」)の憲法上の地位を有するかを明らかにすることを目的とする申請者の2020年度以降の研究計画の準備作業として、刑法上の基本原則の憲法上の地位に関する議論の蓄積が豊富なドイツ法およびアメリカ法の調査および日本国憲法の刑事法関連規定の通説的解釈に関する調査を実施した。
 ドイツにおいて近時、刑事憲法学(Strafverfassungsrecht)と呼ばれる、憲法と刑法の架橋と呼ぶべきアプローチが立ち上がっていることを発見した。このアプローチにより、これまでの刑法の基本原則と憲法論とが、理論的に接合されるのみならず、ドイツにおける連邦憲法裁判所の存在とあいまって、法令の違憲無効という実践的効果を意図した議論が展開されることが明らかとなった。
 また、日本国憲法31条から39条までの規定の通説的解釈を確認し、刑事法の基本的議論と接合可能な点を明らかにすると同時に、憲法学によって刑法学によっても語られていない〈議論の盲点〉を確認した。この点をインタビュー調査によって埋めていくことを、2020年度以降の研究に組み込むこととした。