表題番号:2019C-304 日付:2025/09/09
研究課題少子高齢化時代における日本人の社会対立観
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 准教授 遠藤 晶久
研究成果概要
現代日本の有権者の世代間対立認識について、Waseda-Web2012データを用いた分析では、以下の点が明らかになった。まず、世代間対立(若者と年輩の人)は、労使対立や経済格差対立ほど社会の中心的な対立とは認識されていない。しかし、その認識には年齢による差があり、若年層ほど世代間対立を認識する割合が高く、高齢層では低い傾向にある。このパターンは国際的に共通ではなく、例えばフランスでは高齢者の方が認識する傾向があり、認識の仕方は各国のコンテクストに依存する。
世代間対立認識の形成要因について重回帰分析を行った結果、若い世代ほど認識しやすい。その他、女性よりも男性の方が認識する傾向にあり、世帯収入が低いほど、また政治知識が高いほど認識しやすいことが示された。他人を信頼する傾向のある有権者は世代間対立を認識しないという負の影響も確認された。一方で、イデオロギーや政治システムへの信頼(システムサポート)は、世代間対立認識に統計的に有意な影響を与えていない。
この世代間対立認識は、有権者の政策態度にどのような影響を与えるか。政策重要度に関する因子分析から「ニューポリティクス次元」(女性の地位・社会進出、環境、福祉など)と「オールドポリティクス次元」(防衛・外交、経済、治安・社会秩序など)の二つの政策志向性が抽出された。分析の結果、世代間対立認識は、福祉分野を含むニューポリティクス次元の志向性には統計的に有意な影響を与えていない。つまり、「世代間対立を認識しているほど社会保障政策志向となる」という仮説は棄却された。しかし、オールドポリティクス次元には有意な正の影響があり、特に防衛・外交と治安・社会秩序の分野で効果が見られたことから、世代間対立認識が伝統的な保革イデオロギー政治の中で反映される可能性が示唆された。