表題番号:2019C-105 日付:2020/02/04
研究課題近世初期文芸書における江戸版・上方版の書誌的相違と出版システムの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 中嶋 隆
研究成果概要
本研究では、元禄・宝永期の浮世草子好色本に注目して、可能な限り書誌調査を行った。今回の調査では、半紙本の多い江戸版仮名草子で、上方版を真似た表紙と大本で出版したケースが見られた。例えば『鹿の巻筆』には、当時上方で流行していた紗綾形地巻竜紋行成表紙を模倣した江戸の表紙の中央に題簽を貼っている(早稲田大学図書館新収)。匡郭は半紙本型なので、明らかに貞享二・三年頃の上方の流行を模倣し、紙も腰の強い上方製を用いている。こういったケースから出版システムを論じるには、まだ尚早なのだが、さらに資料の収集に努め、出版メディアの上方・江戸の地域差、さらには両者の文化的差違を射程に置いた考察をすすめたい。