表題番号:2018S-194 日付:2019/04/08
研究課題AI Nihongo Senseiの開発と検証
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 日本語教育研究センター 教授 今井 新悟
研究成果概要
以前、日本語教育用eラーニングを構築した。それには音声認識技術を取り入れ、学習者の応答(質問に対する回答の正誤)に従って、eラーニング内の人の実写ビデオの反応が変わる仕組みを取り入れた。しかし、それは質問と応答の1ターンしか実現できていない。ルールベースのパターンマッチングを使っているからである。質問と応答が連続しても破綻しないシステムを構築するためには、ルールベースではなく、その都度判断できるAIを利用するのが妥当という発想に至った。質問と応答のペアが連続するだけでなく、誤答にはそれを指摘し、ヒントを出すなど、初級の語学の教室内で教師と学習者の間において行われる一連の活動AIを使って実現しようという着想に至った。この研究はすでに、プロトタイプのディープラーニングまでを終え、開発上の問題のありかも明らかにした。
 現在の音声認識技術は、母語話者の声を基にした音響モデルを使用している。また、言語モデルは発話が多少間違っている場合でも文脈から補完することによって認識率を高めている。しかし、本研究はその逆を目指した。つまり、母語話者でない学習者の発音の認識を行い、発話の誤りや不足を確実にとらえるシステムである。同様の研究は管見の限り、存在しない。英語学習のためのAIロボットというものが市販されているが、これらは、上記の通り、英語母語話者の音響モデルと言語モデルを使っている。そのため、母語話者に近い発音で発話すれば認識され、そうでなければ認識されないという発音のチェックが主である。また、AI Nihongo Senseiによって、初級の語学教育の一部なりとも代替できることになれば、教師の役割にも大きな影響を与えるだろうということ国内外の学会発表で提言した。さらに教師の役目は、AIでは代替が難しい、より創造的な学習をファシリテートすることに移っていくだろうということをインタビュー記事で論じた。