表題番号:2018K-413 日付:2019/04/05
研究課題依他起性中心の三性説と円成実性中心の三性説の相違点とその思想的背景に関する考察
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 飛田 康裕
研究成果概要
遍計所執・依他起・円成実という三性の関係を説明する際には、依他起性が中心に据えられることが通例である。ところが、三性説には、依他起性(虚妄分別)をも否定し、円成実性(空性)を中心に据えて説明するものがある。これの顕著な例は、三宝尊による『仏母般若波羅蜜多円集要義論註』である。本研究では、彼が説いた三性説の特徴と意義について考察したが、その特徴は、所取・能取を離れた自己認識(無二智)を「唯識」の識と定めて、それを三性説の中心に据えたところであり、そして、その思想史上の意義は、この自己認識を円成実性に配当することにより、五事説における「正智」の中に「真如」を編入したことであることが明らかとなった。