表題番号:2018K-298 日付:2019/03/29
研究課題構造物劣化診断向けの人工知能に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院情報生産システム研究科 教授 犬島 浩
研究成果概要

1.背景
 日本において、構造物(橋梁など)は高度経済成長期に多数建設されている。これら橋梁は全国で約70万橋存在し、その内、約50万橋が市町村道に設置されている。寿命とされる50年を迎えた2m以上の橋梁は、2023年で43%、2033年で67%に増加する。このため、国および各自治体単位の定期的な診断・修復が必要とされている。一方、検査手法は、目視および打音検査などの手法で実施され、診断技術者の技能に依存している。地方自治体における財政・人材不足に起因し5年に1度という低頻度で検査されており不十分といえる。また、診断ノウハウも継承されていない。
 本研究においては、構造物で観測された信号解析し、機械学習の入力信号とし、損傷の有無、及び損傷の程度を評価する人工知能を提案する。

2.方法
 衝撃試験で観測された加速度信号からAR(Auto-Regressive:自己回帰)モデルを推定する。推定されたARモデルのAR係数を衝撃試験毎に見比べ、損傷に起因すると推定されるAR係数を選定する。

3.結果
 正常状態において推定されたAR係数と損傷状態におけるAR係数にはベクトル空間上差異が観測された。差異の特徴量抽出指標としては、AR係数のn次空間領域を学習データとするのが適当であった。

4.結論および今後の課題
 正常状態と損傷状態における加速度信号に、ARモデル推定を推定しAR係数を選択する。次に選択されたAR係数は、損傷程度に対応して変化している。正常状態の橋梁および橋梁損傷程度に対応する加速度信号で、損傷状態を推定する見通しが得られた。AR係数だけでは抽出困難な損傷も存在することがわかった。今後の課題としては、複数のセンサによる判定精度向上が挙げられる。
研究成果概要(学内公開用)