表題番号:2018K-142 日付:2019/04/17
研究課題大脳皮質知覚神経回路形成における領野の階層決定機構
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 准教授 花嶋 かりな
研究成果概要

大脳皮質は共通の投射標的をもつ6層のニューロンを領野ごとに修飾し、複雑かつ秩序だった3次元の神経回路をつくることで、視覚や体性感覚などの高度な情報処理を担っている。知覚神経回路の形成には細胞内の遺伝子プログラムと末梢感覚器官からの神経入力が必要であると考えられているが、双方の寄与については未だ不明な点が多く残されている。これらの背景をふまえ、本課題では大脳皮質の領野特異的なニューロンの分化を制御する内因性・外因性機構に焦点をあてることで知覚神経回路が構築されるメカニズムを明らかにすることを目的としている。具体的に大脳皮質神経幹細胞が増殖期から分化期に移行するタイミングで一過的に発現上昇するbHLH遺伝子に着目し、時系列の異なる細胞群の抽出を行うために誘導型Cre組み換え酵素のノックインマウスを用い、Creの時期特異的活性化による層特異的ニューロンの標識手法を確立した。特に同一時間に生み出されるニューロンの動態を可視化することで、細胞移動から樹状突起形成までの過程を四次元的に捉え、これまで関連性が不明であった胎生期における神経前駆細胞と分化後の領野特性の発現を直接的に検証することが可能となった。さらに知覚神経回路において感覚入力を担う層ニューロンの分化を制御する転写制御ネットワークを同定し、内因性プログラムによる層および領域特異的なニューロンの分化および統合を制御する分子群を同定した。これら一連の遺伝学的アプローチおよび細胞系譜解析により、同一時間に生み出されるニューロンのダイナミクス、細胞特性、領野の統合パターンを解析することで、大脳皮質領野の階層決定機構の一端が明らかになった。