表題番号:2018K-138 日付:2019/02/06
研究課題権力分立における議会の意義の再検討:イタリア政治思想史の視角から
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 講師 千野 貴裕
研究成果概要
今まで政治思想研究に取り組むなかで、私は、現代政治の主要概念のひとつである「主権論」が、どこまで適切にわれわれの政治生活を説明しているのか、疑問に思うようになった。主権は立法権を意味する。だが、近代国家における主権者(国民)は、立法府の議員を選ぶという間接的で限定的な行為を通じてのみ、主権を行使している。この反面、行政権は、道路工事から極端な場合には私有財産の接収まで、立法府のように主権の定期的チェックを受けないまま、われわれの生活に干渉する幅広い権限を有している。この現代的かつ根本的な問題を前にして、私の専門であるイタリア政治思想研究、とくに、政治学の教科書において、「エリート主義」の先駆けとしてのみ一般に知られるガエターノ・モスカの研究が有益であると考えた。モスカは、もともと議会主義を批判していたものの、ファシズムの独裁が確立すると、それに抗して議会主義を擁護した(「腐敗した議会」を批判するということは、ファシスト、社会主義・共産主義者、民主主義者から自由主義者に至るまで、20世紀前半に幅広く見られた現象であった)。以上を踏まえて、本研究は、モスカの議会論の特質を、権力分立論の系譜に位置付けた。