表題番号:2018K-092 日付:2019/03/27
研究課題コーデクス(冊子本)の成立について-ジラウト・デ・ボルネーユの場合
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 瀬戸 直彦
研究成果概要
2017年7月にトゥールーズ大学 (Institut National Universitaire Champollion (アルビ))で開催された第12回国際オック語オック文学研究学会において,12世紀のトルバドゥールであるジラウト・デ・ボルネーユの一作品における解釈と校訂を軸に研究発表を行いました。Leu chansonet' e vil で始まる第45作品を詳細に検討し,1910-1935年のコルゼン版と1989年のシャーマン版を俎上にのぼせて,従来の校訂版の問題点をあきらかにしました。また本文テクストの選択と詩節の順番という問題にかんして,この第45作品におけるある程度の解答を用意して,ジラウト・デ・ボルネーユという難解な作者の文体の秘密に多少とも迫ってみました。この発表は,査読された上で,2019年中に刊行される論文集に掲載が決まりましたが,査読委員の,トゥールーズ大学のドミニック・ビイイ教授(旧知の方です)と頻繁にやり取りを行うことができました。

2018年度はまた,写本(コーデクス)の成立という本研究課題にかんして,ジラウト・デ・ボルネーユ以外に,南仏において13世紀後半に記されたらしい『フラメンカ』という物語について研究を行うことができました。8000行以上におよぶ長い物語です。これは内容的にもきわめて興味深いものですが,写本はひとつしか残らず,それが冒頭と巻末を欠いており,途中にも脱落があります。とくに途中の脱落と,伝承過程における一部の抹消部分について研究を進めてみました。それが大学院の紀要にしるした論文です。