表題番号:2018K-036 日付:2019/03/27
研究課題インサイダー取引における情報提供行為と必要的共犯
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 松澤 伸
研究成果概要
 必要的共犯(対向犯)における一方の行為に処罰規定が置かれていない場合の総則の共犯規定の適用の可否という古典的な論点について、近時の判例(日興インサイダー事件)を素材に、学説の動向も踏まえつつ、検討を加えた。必要的共犯には、多衆犯と対向犯があり、一般に、総則における任意的共犯の規定の適用はないとされている。そのうち、特に議論が集中してきたのは、対向犯の問題であるが、その対向犯についても、総則の共犯規定の適用を「原則として」排除するのが判例の立場とされてきた。これに対し、日興インサイダー事件では、インサイダー取引の情報提供行為については、立法者が、総則の共犯規定の適用を認める発言をしているのだから、対向犯の一方について処罰規定がなくとも、その処罰規定が置かれていない行為について、何ら問題なく総則の共犯規定の適用が可能であり、したがって、教唆犯は成立する、という見解が主張されてきた。こうした考え方の基礎にあるのは、実質説と言われる学説であり、極めて有力な見解であるが、本研究では、実質説の論理矛盾を明らかにした。その成果は近日中に早稲田法学において論文によって公表する。