表題番号:2018B-296 日付:2019/04/05
研究課題途上国における国際競技大会を契機としたレガシー構想
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授 間野 義之
研究成果概要
近年,スポーツを通じて障害者の権利向上を目指す国際的な潮流が高まる一方,特に途上国においてスポーツをはじめとした文化活動に障害者が参加できる環境づくりの推進に寄与する学術研究は十分進められていない.そこで本研究では、後発途上国に位置づけられるラオス人民民主共和国(以下,「ラオス」)を研究対象として,障害者スポーツ振興政策および補助制度を整理し,当該地域の障害者スポーツ政策の形成要因を明らかにすることを目的とした.研究目的を達成するために,障害者スポーツ政策に関する資料収集,現地調査を遂行した.現地調査においては,ラオス教育スポーツ省,ラオスパラリンピック委員会委員らへのヒアリングを実施するとともに,ラオスにおける障害者スポーツ振興に係る取組みと課題について聴取した.調査の結果,障害者スポーツ予算は,オリンピックと同様のスポーツ政策所管省庁から拠出している.しかし配分はオリンピック予算に偏重しており,実際には福祉や教育を所管する他省からの補助制度が資金調達源となっている.他方,2015年に国連会議にてトンルン・シースリット首相がラオス国家における「人間の安全保障」に関する取組みを発表以降,ラオス政府において,国連開発計画を参酌してより一層国造りを推進する傾向にあり,障害者の人権に対する内閣の取組みも活発化している.その一部として,障害者のスポーツ参加に関する達成目標が,ラオススポーツ推進計画および障害者基本計画に明記され,国家としての取組み姿勢が示された.障害者スポーツが確立する段階にある一方,そもそも障害者の統計的な把握が地方において困難であり,社会参加の機会を必要とする障害者がデータ上に反映されていないという問題が指摘された.以上の結果,国内外における障害者の権利向上に関する意識醸成を背景に,障害者の社会参加を図る上で,スポーツが社会的に発信力のある一つの指標として用いられていると推察できる.