研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 武岡 真司 |
(連携研究者) | 早稲田大学理工学術院総合研究所 | 次席研究員(研究院講師) | 李 天舒 |
- 研究成果概要
リポソームは貪食細胞にエンドサイトーシスにて積極的に取り込まれる。報告者は、カチオン性アミノ酸型脂質のライブラリーを保有し、遺伝子やタンパク質の運搬体とした研究を推進してきた。その結果、脂質の構造(極性頭部、スペーサー長、アルキル鎖長、カウンターイオン)や、遺伝子やタンパク質との混合比や濃度によって、細胞への導入効率・遺伝子発現効率が異なることを示してきた。更には、細胞の種類によってもそれらの条件が異なることも示してきた。
ボン大学LIMESとの共同研究により、異なる構造のカチオン性アミノ酸型脂質からなるリポソームと免疫細胞との相互作用の分子機構を明らかにしてきた。その結果、ある特定の構造の脂質が特に自然免疫系の免疫細胞の賦活化ならびに獲得免疫系におけるアジュバント効果において、高い活性を示すことを初めて見出した。更に、あるカチオン性アミノ酸型脂質のアルキル鎖長が炭素数で2個異なるだけで、通常のエンドサイトーシス経路から膜融合の経路でリポソームが取り込まれることを見出した。膜融合は、標的細胞に対して、短時間に高効率でリポソームに担持させた薬物を細胞側に移行させることができる。
また、アニオン性アミノ酸型脂質リポソームにおいては、活性化された血小板との相互作用において、脂質の構造の相違がリポソームのζ電位の相違に繋がり、更に血小板凝集塊に取り込まれる効率が異なることも明らかにした。
この様な脂質構造と細胞における生理活性との相違をより高い効率でスクリーニングするために、混合脂質のエタノール溶液と担持させたい生体高分子を溶解させた水溶液とをマイクロ流路中で混合して、複合体ナノ粒子を構築し、限外ろ過によってエタノールやナノ粒子未担持の生体高分子を除去した後に、細胞との相互作用を評価する方法を検討している。