表題番号:2018B-152 日付:2019/02/19
研究課題3Dプリンタによる固体酸化物形燃料電池の三相界面微細構造の作製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 中垣 隆雄
研究成果概要
固体酸化物形燃料電池(SOFC)は発電効率が高く,分散電源として有望であるが,製造コストが高く,普及の障害となっている.SOFCのコスト分析では原材料費が多くを占めており,出力密度の向上によるによる原材料費の削減が必要である.SOFCの電池反応は電子,酸化物イオン,燃料ガスの3つのネットワークが途切れなく出会う場である有効な三相界面(TPB) にのみ生じ,その形成状態は発電性能に大きな影響を与える.微細構造を3D プリンタで立体的に形成することで,有効なTPB の増大と出力密度の向上が見込める.そこで本研究ではインクジェット式3DプリンタであるDimatixに電池材料微粒子が溶媒中に良好に分散されたインクを給してセルの燃料極/電解質間にTPBの拡大を目的とした微細構造の実装を目指した.微細構造を実装したセルは①燃料極基盤を作製し,②その上に微歳構造の積層および加熱脱脂,③その後電解質の焼結,④さらに空気極の焼結をして得る.②の微細構造の積層においてDimatixの吐出可能なインクが低粘度に限られるため,液滴が基盤に着弾すると液滴は水平方向に広がり積層幅が50μm程度になるが,鉛直方向の高さは1μm以下となる.この制限から微細構造は多孔質燃料極と緻密電解質の線が交互に並んだ線状構造体を積層し,その上に90度回転させた同様の線状構造体の積層を繰り返すものとした.また本研究においてDimatixによる吐出実績のない燃料極インクを添加する造孔材の粒径とインク粘度への影響からアクリル粒子を選定・調整した.さらに,微細構造のパラメータである線幅,線厚みが燃料極間における過電圧に与える影響を数値計算で予測しながら形状を決定した.②微細構造の積層,加熱脱脂後および③の電解質の焼結後の顕微鏡観察によりクラックフリーの構造体を確認し,ドライメタンによる600℃での発電試験により302mW/cm2の最大出力密度が得られたことから,微細構造を実装したSOFCの作製工程を確立した.