表題番号:2018B-079 日付:2019/04/27
研究課題途上国における開発援助受入と海外資本流入との関係
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 教授 高瀬 浩一
研究成果概要
  この研究のテーマは受入国を小国開放経済として開発援助の影響を分析することである。既に分析済みの理論モデルを基に、仮説検定の可能な計量モデルを導出する。この方針に従い、従来の贈与を中心とする援助データから融資を中心とする公的資金データに増補・改訂し、新しいパネル・データを構築する。2018年度では昨年度に引き続き、小国開放経済の国際資本フローのうち、現実の経済活動に高い影響を与えている、現地での外国通貨の流通(いわゆるドル化)に注目し、IMFのInternational Financial Statisticsから、世界各国の標準的なドル化指標データを収集・整理した。ドル化の代表的な指標としては、外貨預金通貨量の貨幣供給量(通常M2)に占める割合、あるいは外貨預金通貨量と総預金通貨量との比率の2つが汎用している。このデータソースがカバーしている国数は約80しかなく、残りの国(大半のOECD加盟国や一部の途上国を含む)については、IMFの各国レポートや各国の中央銀行の情報から抽出する必要がある。
  ドル化指標としては現金通貨流通量による定義が望ましいが、残念ながら、現実にはそのような情報がデータ化されている国は皆無(日本を含む)である。現金通貨の流通状況を把握するため、ミクロネシア連邦(Federated States of Micronesia: FSM)において政府・金融機関の関係者を対象にインタビュー調査を行う。FSMは世界で非常に珍しい公式完全ドル化国であるという理由からである。完全ドル化国とは、自国中央銀行や自国通貨の存在に関わりなく、事実上、第3国の通貨のみが流通している国のことである。更に、公式完全ドル化国とは、自国中央銀行もなく、自国通貨もなく、法定通貨を第3国の通貨のみと自国政府が認定し、第3国もその使用を公的に承認している国であり、ドル化の究極例と考えられるのである。昨年度のポンペイ州での調査を前提に、2018年度はチューク州およびコスラエ州において調査を実施した。