表題番号:2018B-063 日付:2019/04/08
研究課題ピュグマリオン的欲望の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 神尾 達之
研究成果概要
前年度の研究では、20世紀から21世紀への転換期において、欲望する主体が他者と構築する個別の現実が絶対化され、現実が複数化しているという表象がしだいに強くなっていることを確認した。ピュグマリオン的欲望の充足を可能にするメディアとして映画が重要な役割を果たしていた。この時期、現実と夢/虚構/妄想との二項対立の自明性に疑問符を付けるような映画が登場してきた。映画は内容と形式の両面において、享受主体の個別的な現実と結びつくようになっている。映画の歴史において、観客たちは暗い空間内で席に固定され同時に同じ動画を享受した。映画は20世紀前半にはこの形態によって、人々を共同体へと束ねることができた。しかしながら、テレビやPCでも映画を鑑賞することが可能となり、さらにはタブレットPCやスマートフォンで任意の時間と場所で映画を観ることができるようになると、映画は鑑賞する主体の個別的な現実と直接結びつくようになる。内容の点でも、夢やドラッグやゲームやヴァーチャルリアリティや特定のフィクションをモティーフにした映画は、現実が主体の個別的な表象であるかのように描き出す。