表題番号:2018B-008 日付:2019/04/06
研究課題憲法学における「制度」の基礎づけ―人権と制度の新たな関係構築に向けて
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 笹田 栄司
研究成果概要
判例には人権の実現を制度内に限る傾向を持つ制度的思考が存在する。裁判制度に関し、最高裁は最決平成23・4・13等で手続的正義を用いて、裁判官の裁量に委ねられていた裁判手続の形成に統制を及ぼした。但し手続的正義は訴訟原則であって、主張・立証の機会を訴訟当事者に権利として保障しない。最高裁は、抽象度の高い手続的正義を用いることで「権利」を避けたと思われる。立法裁量を広く認める制度的思考は、制度運用者(裁判官)にも広範な裁量をもたらす。制度利用者の視点が希薄な制度的思考にあっては、手続的正義よりも、制度利用者たる訴訟当事者の裁判を受ける権利に主張・立証の十分な機会を基礎づけることが必要である。