表題番号:2018B-006 日付:2019/04/11
研究課題成長レジームの比較政治分析:技術革新、亀裂変化、新しい社会連合
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 真柄 秀子
研究成果概要

本研究は、成長レジームの中でも、先進諸国において近年その重要性が特に顕著となってきた社会的投資に焦点を当て研究したものである。近い将来に実施を計画している、より本格的な国際比較研究を視野に、本プロジェクトは予備的研究として、日本を対象としたサーベイ実験を実施し、社会的投資に関する実証的な分析枠組み構築の基礎を固めることを目的とした。


2000年EUリスボン戦略の提示以降、社会的投資政策は先進社会における新福祉・成長構想の中心的枠組みになっている。社会的投資戦略とは、現在の諸問題に対応しつつ将来的帰結をさらに重視し、従来の所得移転を特色とするケインズ型福祉国家から、教育投資や女性労働市場などのインクルーシブで長期的な人的資本形成政策を軸とした雇用可能性最大化による高生産性経済へのシフトを意味している。


社会的投資は、一般的に先進諸国の市民に歓迎されるが、ケインズ主義と新自由主義――もしくは平等主義と能力主義――という相互に対立する要素を併せ持つことにより矛盾も内包している。社会的投資は一般的には有権者に好まれるものの、世界金融危機以後は、スカンジナヴィア諸国を含む多くの国々でこの分野の支出が削減されている。また、日本やイタリアなどのいくつかの国々は、一貫して社会的投資の水準が低い。 


本研究では、各国の経済的平等と生産性に大きな影響を与える教育政策、積極的労働市場政策、育児支援政策という相互に関連する三つの政策分野に焦点を当てた。近い将来に実施する予定の、より規模の大きな国際比較研究に先立ち、社会的投水準が特に低い日本を対象にサーベイ実験を実施し、投票者が社会的投資政策を支持することを阻んでいる主要な要因を明らかにした。


暫定的な研究成果は、英語おおび日本語で、独仏日国際会議や日本学術会議公開シンポジウム等で報告した。