表題番号:2017K-361 日付:2018/04/13
研究課題ルソーのギュスターヴ・フロベールに対する影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 中野 茂
研究成果概要
 本特定課題研究においては、フロベールが記した『社会契約論』の読書ノートを詳細に検証することで、ルソーのフロベールに対する影響の射程に迫った。
 フロベールの読書ノートは、大部分が『社会契約論』の忠実な要約から構成されているが、時折挟み込まれる批判的コメントから、フロベールがルソーと袂を分かった点が浮かび上がってくる。批判的注釈の多くは、歴史考証の視点から、さらには政治的な視点から行われている。とりわけ、フランス革命前の社会を生きたルソーはその著作の中で、「平等」概念に基づく社会の再構成を提案した一方で、フランス革命から半世紀以上経過した19世紀後半を生きたフロベールは、押し寄せる「低いレベルでの平等」への最後の砦として理想的な小説世界の構築を目指していた。ルソーの思想が平等を標榜する共和国を生み出したという意味で、フロベールはすべての問題の根源をルソーに見て取っていたことが分かる。