表題番号:2017K-319 日付:2018/02/28
研究課題スポーツ選手の特異的な姿勢制御の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授 彼末 一之
(連携研究者) 早稲田大学スポーツ科学研究科 修士課程学生 長谷川公輝
(連携研究者) 杏林大学医学部 講師 中島 剛
研究成果概要

武道競技には攻防にすぐ移行できる構えという特有な姿勢がある。適切な構えを行うために、選手や指導者にとってこの構えのメカニズムを知ることは重要である。先行実験として、構えが姿勢制御の重要な要因の1つであるH反射に与える影響を検討した。被験者は国内レベルの大学相撲選手(8人、競技歴10年以上)とした。軸足の脛骨神経に電気刺激(パルス幅200µs,インターバル3sを行った。ヒラメ筋のEMGからH波とMを測定し、電気刺激強度を徐々に増加させ、リクルートメントカーブを作成した。リクルートメントカーブから得たH波最大値(Hmax)M波最大値(Mmax)で規格化した(%Hmax)。電気刺激は3つの姿勢時に行った。立位、試合をイメージしたときの構え(構え-イメージ)、イメージをしなかったときの構え(構え-イメージなし)である。この時、試合場面における、相手に対してできるだけ素早く反応できるイメージの教示を行った。これら3姿勢の%Hmaxの比較を行った。 構え-イメージありにおける%Hmaxが一番高い値を出した被験者の数は、8人中6人だった。立位における%Hmaxが一番低い値を出した被験者の数は同じく8人中6人だった。また、それぞれの姿勢での平均%Hmaxは、立位48.92±16.09%、構え-イメージあり55.45±15.34%、構え-イメージなし53.21±14.35%であった。立位と構え(イメージあり)の%Hmaxに差がある傾向が見られた(P=0.062)。立位と構え-イメージなし、構え-イメージありと構え-イメージなしの間では差が見られなかった。%Hmaxは脊髄興奮性を表す(S. Grosprêtre et al. 2012)。実験結果から、構えのイメージと、構え姿勢が脊髄内興奮性を高める傾向があった。イメージ単体がH反射与える影響が無いことから(B. Hale, et al. 2003)、構え姿勢と相手に素早く反応するイメージを組み合わせることによって、H反射を亢進した。これは長年の練習や経験によるものだと考えられる。