表題番号:2017K-309 日付:2018/05/10
研究課題「従属性」と「連動性」に着目した擬人化エージェントの設計指針に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 松居 辰則
研究成果概要
擬人化エージェントに対する否定的印象には,外見から予測した振る舞いと実際の振る舞いとの不一致が影響していると先行研究により示唆されている.Sayginら(1)は,人間とロボットとアンドロイド(見た目は人間で動作が機械的)の3種類の映像を被験者に提示し,映像を観察している時の脳活動を比較する実験を行った.その結果,アンドロイドを観察した時のみ特異的な神経活動が観測されたとの知見を得ており,この原因を「外見から予測される動作と実際の動作との不一致に違和感を感じたため」と考察している.また、小松ら(2)は外見から予測される機能と実際の機能との差を「適応ギャップ」と定義し,それがユーザに与える印象に強く影響を及ぼしていることを実験により明らかにした.更に,山田ら(3)は「適応ギャップ」と「不気味の谷」との関連を述べており,実際の機能が外見から予測される機能を上回った場合は肯定的印象を得るが,実際の機能が外見から予測される機能を下回った場合はエージェントに対し嫌悪感を抱くと考察している.そこで,本研究では擬人化エージェントの「外見から予測される機能と実際の機能の差」に着目し,外見から予測される機能を上回るような優れた機能を擬人化エージェントに実装することで,肯定的印象を得ることができるのかをエージェントとのコミュニケーション実験を通して検証した.

(1) Aya Pinar Saygin, Thierry Chaminade, Hiroshi Ishiguro, Jon Driver, Chris Frith: "The thing that should not be : predictive coding and the uncanny valley in perceiving human and humanoid robot actions", Cognitive and Affective Neuroscience, Vol.22, No.2, pp.1-10 (2011)
(2) 小松孝徳, 山田誠二: "適応ギャップがユーザのエージェントに対する印象変化に与える影響", 人工知能学会論文誌, Vol.24, No.2, pp.232-240 (2009)
(3) 山田誠二, 角所考, 小松孝徳: "人間とエージェントの相互適応と適応ギャップ", 特集 HAI: ヒューマンエージェントインタラクションの最先端, 人工知能学会誌, Vo.21, No.6, pp.648-653 (2006)