表題番号:2017K-275 日付:2018/02/21
研究課題突発的かつ大幅な価格変化の事前予測方法に関する研究:外国為替市場を事例として
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 北村 能寛
研究成果概要
情報トレーダの取引を計測する指標としての、volume-synchronized probability of informed trading (VPIN)の瞬時的価格崩壊予測力に注目して研究を進めた。 情報トレーダーとは、一部の取引参加者に限定され利用可能な情報にもとづき取引を行う取引参加者である。ここでの情報とは、為替レートに影響を及ぼす情報である。従来の研究では、情報トレーダーはその執行確率の高さから成り行き注文を選択することが前提とされ、その取引をオーダーフローで代理することが一般的である。

しかしながら、従来の成行注文に基づき執行される取引では、指値注文を行う情報トレーダーの取引が考慮されないという問題がある。その一方で、VPINは、指値注文のみならず成り行き注文をも考慮した情報トレーダーの取引代理変数となりうる可能性がある。そこで、オーダーフロー、VPINいずれが、為替市場の瞬時的価格崩壊を予測できるかに注目した実証研究を行った。情報トレーダーの取引が断続的であれば、非情報トレーダーは「負け」が蓄積することになり、その結果ロスカット目的で「投げ売り」を行う。その取引は瞬時的価格崩壊をもたらす。

実証分析結果は、VPINは瞬時的価格崩壊を予測できる可能性を示唆するものであった。その一方で、オーダーフローの瞬時的価格崩壊予測力を支持する結果は得られなかった。この結果は、情報トレーダーの代理変数としてVPINを採用することの根拠となりうる。

一連の研究成果は、以下の論文として公刊されている。

Kitamura, Y., 2017. Predicting a flash crash in the yen/dollar foreign exchange market.
Applied Economics Letters 24 (14), 987-990.

Abstract
 I examine whether the volume-synchronized probability of informed trading 
(VPIN) can predict a flash crash in the yen/dollar foreign exchange market. The results show 
that VPIN using bulk volume classification predicted a recent event. However, VPIN using 
order flows, which are the amount of the ask-side transaction minus those of bid-side, does 
not.