表題番号:2017K-095 日付:2018/04/01
研究課題ドイツ小説における地下的クロノトポスの歴史的変遷
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 山本 浩司
研究成果概要

ユゴー、シュティフター、ドストエフスキーら19世紀来の地下室というトポスが戦後作家グラス、東独作家ヒルビッヒによってどう変容したかを検討した。ドストエフスキーの水晶宮批判を踏まえると、グラス『ブリキの太鼓』における「ガラス破壊」のモティーフは近代化への批判と読めるものの、彼の戦略は語り手の全知全能性を温存する方便でもあった。堅牢な地下施設にはない多孔的で襞の多い子宮のイメージにつながるヒルビッヒの泥まみれの廃坑が、伝統文学と内通した戦後文学の地下クロノトポスの限界を乗り越えていることが明らかにされた。成果としては秋にパリの国際学会でヒルビッヒとブラウンの炭坑詩を比較する口頭発表をした。