表題番号:2017K-074 日付:2018/02/21
研究課題巻子本からコーデクスにいたる写本支持素材とテクストのヴァリアントの関係について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 瀬戸 直彦
研究成果概要
 本課題につき,2017年7月10日―15日に開催された,第12回オック語オック文学国際学会(アルビ,トゥールーズ大学シャンポリオン研究センター)で発表をおこなった。具体的には:
1) トルバドゥール(中世南仏の抒情詩人)のジラウト・デ・ボルネーユ Giraut de Bornelh(1160-1200年頃に詩作)のLeu chansonet'e vil ではじまる一作品 (PC 242, 45) を題材にして,その解釈と校訂を示し,16以上ある写本の「読み」をどのように勘案して本文テクストとして確定すべきかという問題を提示した。底本としては私が以前から研究の対象にしているフランス国立図書館fr. 856写本を選んだ。
2) 現在ニューヨークのピアポント・モーガン・ライブラリーに保存されているN写本の欄外に描かれた挿絵とテクストとの関連をしめした。
3) この詩人の全作品は,これまでアドルフ・コルゼン(2巻,1910-1935年)と,ルース・シャーマン(1989年)により校訂版が作成されている。これらの業績の内容を確認し,じっさいにこの作品においてどのような方針で本文を作成しているかを詳細に検討し,私なりの新たな方向を提示してみた。
 また仏文の機関誌Etudes Francaisesにおいて,作品中に比喩として使われる「アササン」assassinという語彙にかんして,その初出を中世ラテン語,古オック語,オイル語において検討する論文を執筆した。