表題番号:2017K-034 日付:2018/03/25
研究課題地方財務行政の法的統制制度の日独比較法研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 田村 達久
研究成果概要
 日本における地方公共団体の財務行政(地方財務行政)の適法性・適正性確保を図るのための統制制度たる住民監査請求・住民訴訟制度は、一方で、(1)2017年の地方自治法改正における、①自治体監査委員が法令の規定により行う監査等を行うに当たって従うべき監査基準の制定・公表、及び、②長による内部統制に関する方針(=財務に関する事務等の適正な管理及び執行を確保するための方針)の制定と同方針に基づく必要な体制の整備の各法定義務化(ただし、2020年4月1日施行)によって、他方で、(2)2017年度までの3年度間の準備経過期間を経て2018年度から複式簿記を基本とする統一的な基準に基づいた財務書類を作成する新地方公会計制度が全地方公共団体で運用されることによって、今後その機能的実効性をさらに高めることになろう。もっとも、前記(1)の法的影響の如何の正確な判断・評価は、当該措置の現実の運用を待たねばならないため、本研究の実質的継続によって行わざるをえない。また、前記(2)の措置の準備導入段階での法的影響の如何についても、それが必ずしも明確であるわけではない。しかし、この点に関しては、比較研究対象としたドイツ連邦共和国においては、地方公共団体の行政運営に係る新制御モデル(Neues Steuerungsmodell)という指導構想の下での当該行政運営がここ20年ほど続くなかで、当該構想の重要な構成部分をなす複式簿記制度(Doppik)が導入され、同制度による地方財務行政の法的統制が進んでいる。そこで、当該成果が前記(2)の現状にある日本においても参照されるべきではあるが、ドイツでも新制御モデルに係る総括的検討が最近行われるようになったこと(Bruenig/Schliesky (hrsg.), Kommunale Verwalutungsreform-20 Jahre Neues Steuerungsmodel, 2017)に鑑みると、現在進行の研究動向等を並時的に検討しながらの本研究の内容的深化と実質的継続とが緊要となっている。