表題番号:2017B-311 日付:2018/02/28
研究課題ランニングの新しい概念に基づく正しい走動作獲得法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授 彼末 一之
(連携研究者) スポーツ科学研究科 修士課程 後藤悠太
(連携研究者) スポーツ科学研究科 博士課程 欠畑 学
研究成果概要



「走能力は生まれつきの素質による」ものだと広く考えられているが、疾走能力にはランニングフォーム(技術)と強い関係がある。そこで、本研究では「正しいランニングフォーム」の重要性を検証、それを身につける方法を確立して「走能力は生まれつきの素質による」というドグマを打ち破る事を目標とした。本年度の研究目的は「正しいランニングフォーム」の重要性の検証である。走能力の評価には走速度が頻繫に用いられる。走速度(m/s)はストライド(一歩の長さ)とケイデンス(単位時間あたりの歩数)の積で求められる。陸上競技選手を対象にした研究から、低速度では走速度の増加に伴いストライドが増加していき、高速度ではケイデンスが急激に増加する事が報告されている(Hay, 2002)。しかし、これらの特性は陸上競技選手のトレーニングによって後天的に獲得された可能性がある。そこで、この仮説を検証するために陸上競技選手と非陸上競技選手を対象に実験を行った。両群を対象に様々な走速度(m/s)で走行した際のストライド(m)とケイデンス(step/s)を算出した。その結果、5m/s未満における走速度の増加に陸上競技選手と非陸上競技選手(特に運動経験のない素人)で異なる傾向が得られた。その傾向とは、運動経験のない素人は陸上競技選手群よりも速度の増加にケイデンスの増加をより多く用いる事である。つまり、陸上競技選手を対象に広く報告されてきた走速度の変化に関する特性は陸上競技選手群がトレーニングによって後天的に獲得した可能性を示唆している。そして、このような特性の違いにはランニングフォームの差が関係していると考えられる。 今後はこの特性の違いを引き起こすランニングフォームの差について、「効率」の側面から検討する。これによって「正しいランニングフォーム」について定量的に評価するための基準を確立する。