表題番号:2017B-156 日付:2018/03/01
研究課題縮減社会における広域圏を対象とする空間計画の計画技術に関する英仏独比較調査
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 後藤 春彦
(連携研究者) 理工 助教 山村崇
研究成果概要

本研究では、複数の都市圏からなる計画単位として欧州諸国で台頭しつつある「シティ・リージョン(CR)」について、先行的取り組みが進む英・仏・独における動向を理論・実践の両面から分析した。

CRに関する学説の動向を整理した結果、土地利用計画の広域調整など物理的課題解決に関する言説には大きな変化が見られない一方、より社会的な諸課題に対してハード・ソフト両面からアプローチすることの重要性が高まっているとの知見を得た。そこで、そうした取り組みのなかで特に顕著な主題として、地域を基盤とした「社会的包摂の実現」「医療福祉の充実」「地域経済開発の支援」に着目し、独(+補足的に蘭)のまちづくり現場を訪問してフィールドサーベイを行った。主要事例の特長と課題は以下の通り:

「社会的包摂をめざすまちづくり」(フライブルク市郊外Vauban地区)

社会・環境都市を標榜したまちづくりが進むエリアである。地域内には高齢者住宅・障害者施設も含まれ、多数の社会的包摂プロジェクトが実施されており、老いも若いも、障害のあるもないも、共に住むまちが目指されている。商業・業務機能も誘致しているが、地域雇用の多様性に乏しい点など課題もある。

「地域を基盤とした医療福祉にむけた取り組み」(Nordrach市)

農村部の福祉法人が中心となり、豊かな農村環境のなかで、地域ぐるみのリハビリが行われている。人間らしい福祉サービスを望む患者と家族のニーズが、農村部に雇用を生み、地域活性に寄与している。早期社会復帰を支援する現地保険会社の資金援助を受けた取り組みであり、我が国への適用のためには補助金等の資金確保が課題になる。

「経済開発を支援する空間計画」(Amsterdam大都市圏)

Amsterdam都市圏の人口増に伴って必要となる新たな空間需要を広域で調整し、開発による負担と果実の分配を最適化することで、地域経済の振興を支援している。近年は交流人口の急増によって、宿泊施設の開発管理と最適配置が主題として台頭し、専門部署が対応しているが、そのノウハウは発展途上である。イベント開催時・観光ピーク時にビジネス客が宿泊できなくなるなど宿泊需給が逼迫しており、その解消は喫緊の政策課題となっている。