表題番号:2017B-071 日付:2018/02/17
研究課題六藝書としての『史記』と『漢書』の思想史的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 渡邉 義浩
研究成果概要

  後漢の明帝は、司馬遷が『史記』を著したことは、「名を後世に揚ぐ」べきものであるが、「微文」により当世をそしったことは、「誼士」ではない、と批判している。司馬遷が春秋学により武帝を批判していると、明帝は的確に理解していた。司馬遷の『史記』執筆の思想的な背景は春秋公羊学にあり、その執筆目的は、春秋の微言により武帝を批判することにあった。しかし、後漢になると、『太史公書』が「史の記」に止まっていないことは理解され、そして問題視されていく。『春秋』のように是非を弁ずる部分が、国家を謗るものとして批判されたのである。こうした『太史公書』への批判の中から、『尚書』の継承者として漢を賛美する『漢書』が成立するのである。