表題番号:2017B-023 日付:2018/04/21
研究課題司法システムの「入口」段階における福祉へのダイバージョンの展開可能性に関する考察
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 石川 正興
研究成果概要
1.調査内容
ベルギー・オランダを訪問し、以下の聞き取り調査・意見交換を実施した。
① 2018年3月20日(火)  De Prael(社会的企業)
② 2018年3月22日(木) フラマン語共同体福祉・保健・家庭局
③ 2018年3月22日(木) フラマン語電子監視センター
④ 2018年3月23日(金) ハッセルト保護観察所
⑤ 2018年3月23日(金) ハッセルト・ファミリー・ジャスティス・センター
⑥ 2018年3月26日(月) The Foundation 180(NGO組織)
⑦ 2018年3月26日(月) Exodus Foundation(更生保護施設)
⑧ 2018年3月27日(火) 司法安全省
⑨ 2018年3月27日(土) ドルトレヒト刑務所(男子刑務所)
⑩ 2018年3月27日(土) タイリンガルエイント少年収容施設(男子少年収容施設)
⑪ 2018年3月27日(土) オランダ保護観察協会
    
2.調査の結果得られた知見
➀社会内処遇の実施主体:ベルギーでは2015年以降、連邦政府ではなく、地方政府である言語共同体が社会内処遇の実施を担っており、その一つのフラマン語共同体では、福祉・保健・家庭局が保護観察等を所管している。オランダでは、司法安全省が社会内処遇を所管しているが、その処遇自体は「オランダ保護観察協会」・「物質依存者処遇団体連盟」・ 「救世軍保護観察部門」という3つの民間団体が委託を受け実施している。
➁多機関連携の仕組み:ファミリー・ジャスティス・センターは、家庭内暴力や児童虐待、高齢者虐待の被害者を保護し、家庭を支援する組織である(ヨーロッパでは、ヨーロッパ・ファミリー・ジャスティス・センター連合が組織され、現在8か国に広がっている)が、ベルギーでは、警察官・検察官・犯罪学者・ソーシャルワーカー・カウンセラー等がファミリー・ジャスティス・センター内の同一のオフィスで共有データベースを利用しながら協働し、連携して問題解決に当たっている。セイフティ・ハウスは、オランダの各地域に設けられている多機関連携の組織であり、非行少年や累犯者に対して関係機関が連携して包括的な支援を行うことを目指し、警察官・検察官・保護観察官・自治体職員等がオフィスやデータベースを共有しながら協働して地域支援を図っている。
➂わが国では、社会内処遇は法務省が所管しているが、ベルギー・オランダでは社会内処遇の実施主体は自治政府の福祉担当部局や民間組織が担っており、多機関連携が活発に行われていることが明らかになった。わが国における福祉へのダイバージョンの展開可能性を、これらの国の仕組みと比較検討していった。