表題番号:2016K-344 日付:2017/04/04
研究課題『阿毘達磨大毘婆沙論』における三世実有論証の分析とその展開に関する思想史的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 飛田 康裕
研究成果概要
インドの仏教教団内の説一切有部(以下、有部と略す)は釈尊の教説を体系化せんと試み、その中心概念として「三世実有」という考え方を据えた。三世実有論導入後の有部の活動は、体系化の際に生じた齟齬を解消するための議論や補足説明へと展開し、その集大成として『阿毘達磨大毘婆沙論』が編纂された。本研究では、『阿毘達磨大毘婆沙論』の三世実有論について、旧訳(北涼・浮陀跋摩等訳)と新訳(唐・玄奘訳)を比較対照し翻訳を行ったが、旧訳に対して新訳には増補された部分が多く、議論を論理的に分析した結果、その増補部分は、三世実有論と諸行無常説との齟齬を解消するために導入された「作用説」の影響下にあることが明らかになった。