表題番号:2016K-319 日付:2017/03/30
研究課題アメリカ南部文学におけるユダヤ人表象ーウィリアム・フォークナーの初期作品から『寓話』まで
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 国際教養学部 教授 大和田 英子
研究成果概要

ウィリアム・フォークナーの初期作品には多彩な人種表象が認められる。その特徴は、ほぼ無意識に描写がなされていることであり、近年隆盛となった人種や民族をめぐる諸問題への意識の萌芽が認められる点である。フォークナーの場合は分析の視点として、アフリカ系アメリカ人、旧南部の元奴隷、その子孫への眼差しがクローズアップされ、アメリカ史の影となってきたネイティヴ・アメリカンへの視線が時折交錯するケースが多い。そのほかの人種表象に関しては、ややもすると等閑視され、フォークナー家のルーツをめぐる掘り下げに止まるケースが多い。本研究では、初期作品「ニューオーリンズ・スケッチ」におけるユダヤ人と『寓話』におけるユダヤ人の表象の変化を比較すると同時に、米国深南部に存在していたユダヤ人コミュニティーの特異性を参照し、アメリカ社会におけるユダヤ人表象の特徴を比較検討した。