表題番号:2016K-239 日付:2017/02/28
研究課題ウェーブレット変換による構造物劣化診断手法の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院情報生産システム研究科 教授 犬島 浩
研究成果概要
ウェーブレット変換による構造物劣化診断手法の研究
1.背景
 構造物の劣化診断・検査手法は、目視および打音(ハンマリング)検査などの手法で実施され、診断技術者の技能に依存していることが多い。熟練技能者の退職および予算減少により、人材および財政不足起因しする、構造物の監視・診断が放置されている傾向にある。ある自治体では、構造物(橋梁やトンネルなど)の検査、5年に1度という低頻度で検査されており不十分といえる。
 本研究においては、実橋梁を例題として研究をすすめる。橋梁に衝撃を与え、観測される加速度信号に、ウェーブレット変換による信号解析する。従来の診断手法と比較して損傷の有無、及び損傷の程度を評価する診断手法を提案する。また、他の診断手法の検討も実施する。
2.方法
 衝撃試験で観測された加速度信号、離散ウェーブレット変換・逆変換し、スケール毎に分解する。分解した信号を衝撃試験毎に見比べ、相違が観測される信号を合成する。次に、連続ウェーブレット変換し特徴抽出する。本報告では、基底関数はいかのとおりである。離散ウェーブレット変換ではDaubechie、連続ウェーブレット変換ではメキシカンハット関数を選択した。
3.結果
 時間-周波数解析手法、連続ウェーブレット変換を適用した。基底関数はガボール関数を選択している。結果は期待したほど、良好ではなかった。そこで、離散ウェーブレット変換・逆変換の解析手法導入しフィルタリングを試みた。その結果、劣化状態の特徴的変化を検出することができた。
4.結論および今後の課題
 正常状態と損傷状態における加速度信号に、離散ウェーブレット変換・逆変換し、適当なスケール成分選択する。次に選択されたスケール成分に連続ウェーブレット変換すると、損傷程度に対応して変化している。正常状態の橋梁および橋梁損傷程度に対応する加速度信号で、損傷状態を推定する見通しが得られた。離散ウェーブレット変換・逆変換によるフィルタリングし、連続ウェーブレット変換だけでは抽出困難な損傷を評価できることがわかった。
 今後の課題としては、複数のセンサによる判定精度向上が挙げられる。また、独立成分分析による、診断・監視にも、解析対象データは、少数ながら、期待が持てる可能性がみいだされている。