表題番号:2016K-223 日付:2017/04/07
研究課題エストロゲン活性を有するCinanthrenol A の合成研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 准教授 細川 誠二郎
研究成果概要

Cinanthrenol A(シナンスレノールA)はステロイドのA環からC環までが芳香族となり、D環部に相当する五員環にスピロ型で結合したシクロプロパン環と水酸基が付いた構造を有する。本化合物はエストロゲン活性が報告されているため、よりエストロゲンに近い構造を有し、なおかつA環からC環までが芳香族となった化合物をデザインして合成した。この際、シナンスレノールAはステロイドの2位に相当する位置に水酸基を有するが、今回の標的化合物は、よりステロイド類に近い構造を目指して、ステロイドの3位に相当する位置に水酸基が付いた化合物をデザインした。水酸基を3位に付いた化合物の合成研究は、3-ブロモフェノールを出発原料としてシナンスレノールAの合成経路に沿って進めた。この合成におけるB環構築のための熱的電子環化反応は問題なく進行し、四環式化合物を高収率で与えた。これにより、デザインしたエストロゲン類似化合物のラセミ体を合成することができた。

また、シナンスレノールAの全合成研究において、最終工程となるA環フェノール部に付いているメトキシメチル基の除去の際に、強酸を用いるとシクロプロパン環が反応してしまい、シナンスレノールAが得られないという問題があった。これについて反応条件を種々検討した結果、Dowexを用いるとシナンスレノールAが得られることが解った。これにより、シナンスレノールAの全合成を達成した。

さらに、シナンスレノールAの合成の効率化を目指し、これまで低収率でしか目的物が得られなかった工程を改めることとした。これまでの合成では、特にトリエンの電子環化反応と系中での酸化によるB環の構築の工程が低収率であった。この工程をサンドマイヤー反応で行うことを計画し、A環の出発原料にo-ニトロフェノールを用いて、これまでと同様の変換を行った。CD環部に相当する化合物とTMSアセチレンを介して薗頭カップリングによって接続し、A環とCD環が、B環となる予定のアセチレンでつながった化合物を得ている。