表題番号:2016K-129 日付:2017/04/05
研究課題アンセルムスにおける宗教間対話の思想
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 教授 矢内 義顯
研究成果概要
 本研究では,キリスト教とユダヤ教・イスラームの宗教間対話が想定される場合に最も重要な論点となる「原罪」についての探求がなされた。西欧キリスト教においては,アウグスティヌス‐ペラギウス論争の経過において,「原罪」の思想が醸成し,明確化され,これを前提として,恩恵と自由選択,救済論,受肉論,マリア論,秘跡論などの主要な教理が展開される。アウグスティヌスは原罪を人間の「情欲」におくが,アンセルムスはアウグスティヌス的な伝統と異なり,原罪を「あるべき義の喪失」とする。この二つの見解を,「原罪とは質料的には情欲だが,形相的には原義の欠如」と調停・総合するのが13世紀のトマス・アクィナスである。