表題番号:2016K-105 日付:2017/04/10
研究課題荘園現地調査法の革新に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 高木 徳郎
研究成果概要

 日本中世史研究における荘園制の成立をめぐる議論は、「寄進地系荘園」概念の見直しを迫る「立荘」論の提起以降、再び活発化の兆しをみせているが、地域社会の現実の実態・動向に即して立ち上げられた議論とは言い難いとの批判があることも確かで、その克服が現在の主要な課題のひとつとなっている。本研究では、従来行われてきた荘園の現地調査の方法を見直すことで、その克服の方途を探ることとし、山城国玉井・石垣荘および大和国栄山寺領において現地調査を行うとともに、現地調査の方法論をめぐって、問題関心を共有する数人の研究者との意見交換および研究交流を行った。これにより、玉井・石垣荘では、当時の水利慣行を彷彿とさせる遺構および水利体系が現地に残存していることまた、栄山寺領では河谷の傾斜地に広大な条里遺構が残存していることが明らかとなり、近世・近代資料の精査を含めた本格的な調査を行うことにより、地域の実態に根差した荘園制論の確立に向けて有効な手がかりが得られることが判明した。