表題番号:2016K-087 日付:2017/04/01
研究課題『漢書』が描く在るべき「古典中国」像の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 渡邉 義浩
研究成果概要
  本研究は、従来、史書であることを前提として研究されてきた『漢書』を「史」の成立以前の「六藝」の書として分析することにより、その思想史的位置付けを試みるものである。
  『漢書』は、劉歆や父の班彪をはじめとする『史記』続成の著作を原材料としながらも、『春秋』を受け継ぐ『史記』続成の動きことは質を異にするため、あえて、『史記』と重なる高祖劉邦から記述を始めた。『漢書』は、その書名にも明らかなように『尚書』を継承するという意味において、「六藝略」のなかの「尚書」に分類されるべき著作なのである。『漢書』を『尚書』との関係で理解することは、古くは唐の劉知幾の『史通』に示唆されているが、それ以降は、民国の劉咸炘『漢書知意』がある程度で、本来的に実証されてはいない。本研究は、『漢書』が『尚書』を継承して漢の「典・謨」たるべきために、前漢をいかに在るべき国家として描き出そうとしたのかを追究した。