表題番号:2016K-075 日付:2017/04/06
研究課題健常者および脳損傷患者における視覚運動順応と運動内部モデルの獲得メカニズムの解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 福澤 一吉
研究成果概要
@font-face { font-family: "MS 明朝"; }@font-face { font-family: "Century"; }@font-face { font-family: "Century"; }@font-face { font-family: "@MS 明朝"; }@font-face { font-family: "游明朝"; }@font-face { font-family: "@游明朝"; }p.MsoNormal, li.MsoNormal, div.MsoNormal { margin: 0mm 0mm 0.0001pt; text-align: justify; font-size: 10.5pt; font-family: Century; }.MsoChpDefault { font-size: 10.5pt; font-family: Century; }div.WordSection1 { }

本研究は,運動課題の練習量や,練習をおこなう時間間隔が,運動学習の進み方に与える影響を明らかにすることを目的とした。運動学習においては,内部モデルと呼ばれる,運動指令と運動結果の対応関係の獲得が重要とされている。内部モデルがあることで,ヒトは予測的な運動制御を利用して,スムーズで正確な運動をおこなうことができる。しかしながら,内部モデルの獲得において,練習量と練習間隔の影響はいまだ検討されてこなかった。

本実験では,ディスプレイ上でランダムに動き回るターゲットをマウスカーソルで追従する課題をおこなった。実際のマウスの動きに対して120度の回転変換をかけたものを,マウスカーソルの動きとして呈示した。ターゲットとカーソルの距離を運動エラーとして算出した。また,そのエラーから,回転環境への習熟度(アフターエフェクト)と学習効率の向上度(セービング)を定量的指標として計算した。これらはそれぞれ,内部モデルの獲得と,運動記憶の定着を示す指標とされる(Huang et al., 2011; Krakauer et al., 2005)。実験の結果,練習量と練習間隔の両方が回転環境への習熟度に対して影響した。また,運動記憶の定着については,練習量によって練習間隔のもたらす影響が異なった。たとえば,練習間隔を一日多くあけることによって,その次の日の学習効率は5%さがった。

本研究の結果は,運動学習の内部モデルの獲得とその定着が,異なる段階・メカニズムで生じていることを示唆する。なぜなら,練習をおこなう時間間隔を長くすると,獲得されたはずの内部モデルの定着が妨げられたためである。さらに本研究は,アフターエフェクトが内部モデルの獲得の指標ではなく,むしろ獲得された内部モデルの駆動を表す指標である可能性を示唆した。本研究を通して得られた知見は,臨床現場において,リハビリの効果を定量的に表現する方法を提案することに寄与する。なお,上記の内容に関連して,昨年度は2件の国際学会発表および5件の国内学会・研究会発表をおこなった。