研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 准教授 | 細川 誠二郎 |
- 研究成果概要
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本研究では、アコニチンの左右の構造(AEF環部およびBCDF環部)の合成研究を並行して行った。BCDF環部の合成研究では、CDF環部の合成においてD環を形成する上で必要なC環上の側鎖導入のためのアルドール反応が収率、選択性ともに低い(45%、dr 3:1)ことが問題であった。F環が付いたC環ケトンのアルファ位を塩基で引き抜いてエノラートとした後、トリチルオキシアセトアルデヒドと反応させる際に、添加剤としてルイス酸を種々検討した。その結果、塩基としてKHMDS、添加剤としてBEt3を加えた際に収率および立体選択性が大幅に向上する(73%、dr 16:1)ことを見出した。TiCl(O-i-Pr)3やZnBr2、Et2AlClを加えても選択性に改善は見られなかったことから、本アルドール反応ではTrOの配位を受けない(キレーションを起こさない)ルイス酸が適当であると考えている。これにより、CDF環部のスケールアップ合成が可能となった。一方、AEF環部の合成研究においては、F環にA環構築のための側鎖を1-メトキシビニルメチルケトンを用いたアルドール反応にて導入し、F環のα‐ジアゾケトンとのシクロプロパン化反応を行った。この結果、望むものとは逆の立体化学を持つシクロプロパンが得られた。すなわち、望むシクロプロパンを得るためには、1-N-エチルアミノメチルビニルメチルケトンを用いればよいことが解った。ここで、一置換オレフィンを末端に有するアルキル基をF環に接続して同様の反応を行ったところ、シクロプロパン体は得られず、F環に6員環が二重結合でつながった環化体が得られた。この反応は、銅触媒が無くても反応する、ジアゾメチル基と末端オレフィンとの熱的[3+2]環化反応を経て得られることが解った。同様の生成物が得られるジアゾ基の反応としては、ロジウム触媒を用いたものが報告されているが、熱的な[3+2]環化反応を経る形式の反応はこれまでになく、新しいジアゾ基の化学を見出すことができた。なお、我々が見出した反応の中間体である[3+2]環化反応の成績体は単離精製後、X線結晶構造解析にて構造を決定している。