表題番号:2016B-058 日付:2017/03/24
研究課題柳田民俗学の組織化に関する通史的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 鶴見 太郎
研究成果概要

柳田国男が津田左右吉の歴史学をどのように捉えたのか、大正期を中心に文献上の検証を行った。成城大学にある柳田旧蔵の津田の著作をすべて当たり、傍線の引き方、余白への書入れなどを記録し、そこに見られる傾向を考察した。結果、古代中国における神仙思想について、柳田は並々ならぬ関心を持っており、役小角の事跡を重ね合わせながら、同種の思想が日本に伝来して民間に根付いた過程を検証する際、津田の業績を援用しようと跡があることが分かった。以上の点は今年(2016年)1月の国際シンポジウムで発表を行った。

 これ以外に、戦後の日本語の在り方について、柳田は政策面から有識者として積極的に関わり、生活の理法に従った論理的な日本語を標榜した点を著作から抽出し、同時代の思潮と対応させた。戦中における時局用語の氾濫は、日本人の言語生活から論理的な思考を奪ったと考える柳田にとって、これは戦後における切実な課題であること検証した。