表題番号:2016A-021 日付:2017/11/14
研究課題非アーベル岩澤主予想の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 尾崎 学
研究成果概要
本研究は,代数体の算術とゼータ関数との深遠な関係である岩澤主予想を非アーベル拡大に対して拡張することを目的としたものである。
pを素数,K/kを有限次総実代数体k上の円分的Z_p-拡大体,Sをkの素点の有限集合でp上の素点をすべて含むものとする。このときK上の最大S-分岐アーベルp-拡大のガロワ群X_Sは自然に完備群環Λ=Z_p[[Gal(K/k)]]上の有限生成ねじれ加群の自然な構造を持つ.従来の岩澤主予想(Wilesの定理)は「X_SのΛ加群構造不変量である特性イデアルの生成元がkのp進sゼータ函数ζ_p(S,kから得られる」という,算術的対象であるガロワ群X_Sと解析対象ζ_p(s,k)の間の深遠な関係を示すものである.
本研究ではこの古典的岩澤主予想の設定のアーベル拡大のガロワ群X_SをK上の最大S-分岐p-拡大のガロワ群G_Sにした場合を考察した.
岩澤によりG_Sは「μ=0予想」の下では有限生成自由pro-p群になることが知られているので,この状況での岩澤主予想は大雑把には「Gal(K/k)の生成元γの引き起こすG_Sの外部自己同型群Out G_Sの元が何らかのゼータ函数と結びつくであろう」と言うことができる.
この非アーベル的な状況での岩澤朱予想は現時点では数学的に定式化することすら困難な状況であるが,本研究においては算術側のΦの群論的不変量を定式化することに成功した.
この不変量はアーベル的な不変量を積み重ねて定義されるものなので,古典的岩澤主予想を積み重ねることでゼータ函数と結びつきやすいものになっている.今後の課題は解析側の「ゼータ函数」を正しく定式化して,非アーベル岩澤主予想を証明することである.