表題番号:2016A-015 日付:2017/04/10
研究課題東南アジアにおける古代国家の形成と都市出現に関する考古学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 准教授 田畑 幸嗣
研究成果概要

 サンボー・プレイ・クック遺跡群N1塔中央テラス東面縁辺部で発掘調査を行い、伽藍の構成要素となる建築構造を確認できた他、中央テラス東面でのみ見られる柱穴列を検出し、出土遺物に関しては土器の壺に新たな口縁形態を確認することができた。

 中央テラス東面縁辺部における建築構造は主に、中央テラス、テラス基部、下部煉瓦敷きで構成されることが再確認された。これらに加え、テラス基部と下部煉瓦敷きとの間には階段状煉瓦敷きが検出されたが、配置法がことなるため、時期差があると考えられる。また、テラス東面中央階段の両脇には内側・外側の二種類の柱穴列がみられ、位置や柱間距離が異なることから、参道に沿って建造されていた木造構造物が一度改築されていることが理解できた。

 遺物分布の状況から、Ⅱ-a層とⅢ層は原位置が異なり、この両者に含まれる遺物もそれぞれ原位置が異なる可能性がうかがえた。それぞれの土層に含まれる遺物をみると、両者ともに玉縁状口縁土器(a類)を含んでおり、a類の中で明瞭な型式的差異が認められないことから、時期的な差異がほとんどないことが理解できる。また、Ⅱ-a層に含まれる土器の方が、より多様な口縁形態を含んでいるが、これは時期的差異ではなく、むしろN1塔に近い中央テラス上の方に多様な種類があるという地点間の差異であると認識する方が妥当と考えられる。よって、テラス基部と中央テラスとの間に建築上の大きな時期的差異はないことが想定される。