研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 国際学術院 国際教養学部 | 教授 | 片岡 貞治 |
- 研究成果概要
2011年のリビアのカダフィ政権の崩壊によって、大量の武器が地域内に流出し、マリをはじめとしたサヘル地域諸国の構造的な脆弱性が明るみになった。ジハードを標榜するイスラム系武装集団が、監視の目が行き届かない砂漠の国境線を、自由に超えて活動し、麻薬や武器の不正取引や誘拐、そしてテロ攻撃などを自由に行うようになったからである。カダフィ政権の崩壊から5年近くが経過し、サヘル地域諸国の各国は、それぞれの戦略で国境管理に乗り出している。
モーリタニアは、その広大な国土を囲む全ての国境線を完全に閉鎖することは出来ず、選択的に東部国境線や南部国境線を閉鎖している。モーリタニア政府は、国境沿いに生息するベラビッシュ族コミュニティの支援を受けて、マリ北部との国境線を管理し、AQIMやAL-MOURABITOUNEなどが闖入しないように目を光らせている。
他方で、同地域諸国の国境警備力に関する脆弱性やイスラム系武装集団の予測不能の国境を超えた活動に備え、チャドは嘗てのカダフィ政権のように、地域のリーダーとして積極的な介入主義政策を実施している。かくして、チャドは、全方位外交として、マリ、ナイジェリア、中央アフリカ全ての問題に関与していった。最近では、リビア問題に対しても積極的な役割を演じようとしている。マリ北部の紛争においては、チャドは、2012年12月に採択された国連安保理決議2085によって構成されたAFISMA(アフリカ主導国際マリ支援ミッション)に2000名の兵士を派遣し、マリの治安維持に従事した。その後、2013年4月に採択された安保理決議2100により、AFISMAを引き継ぐ形でMINUSMA(国連マリ多元統合安定化ミッション)が組織され、2013年7月から活動を開始したが、チャドは引き続き兵士を派遣した。