表題番号:2015K-238 日付:2016/03/22
研究課題まちづくり文脈形成を巡るコミュニケーションとメタガバナンス
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 土方 正夫
(連携研究者) 社会科学部 助手 藤原 整
研究成果概要
 本研究では地域主体の東日本大震災復興計画を対象問題とし、宮城県気仙沼市階上地区における復興計画にアドバイザーという立場で関わり、情報論的立場からアクションリサーチの方法でまちづくりを支援するとともに、復興まちづくりが抱える課題を分析した。特に分散して存在する住民の生活に関わる地域の意味的情報を集約し、住民の発意による主体的まちづくり復興計画の文脈形成過程とその維持管理について研究を進め、現場では文脈形成と地域の組織特性が相互に深く結びついていることを明らかにした。また、地域復興に関する行政施策の機能展開と住民の意味世界の価値的な齟齬問題に着目し、定常的な両者のコミュニケーション・チャンネルを形成し、コミュニケーションを基礎とする新たな地域ガバナンスの在り方の実践活動を通して復興まちづくりの一つのモデルを形成することができた。また、これらの一連の研究活動を通して内在するコンフリクトコントロールの在り方とアウトサイダーが果たすべき役割について、新たな知見を得ることができた。
 これまで2012年から3年半に亘り階上地区の復興まちづくりにアドバイザーという立場で関わってきたが、2013年度にまちづくり協議会が立ち上がり、数回に及ぶ漁協、農協、社協等々の地元組織の復興への取り組みに関する報告会や住民の数回に及ぶワークショップを経て、2014年2月に地元住民による「街づくり大綱」が纏められ、市役所に提出された。2014年4月には市役所もこの大綱に対し、公共予算の制約条件の中で、各種の施策の実施可能性を地域にフィードバックした。つまり、地域自体が縦割りの壁を越えて、地域計画づくりに積極的に関わっていったことになる。これらを基盤とし、階上地域のまちづくり復興計画は着実に前進し、実施計画の局面に入ってきている。更に2015年4月には旧向洋高校跡地が気仙沼市の震災遺構に指定され、地域ではこれをセントラルパーク構想として位置づけている。今後は実施計画レベルでの文脈形成過程について継続的に研究を進めてゆく予定である。