表題番号:2015K-184 日付:2015/11/13
研究課題Academic Spoken English と Academic Written Englishにおける言語的特徴の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 国吉 ニルソン
研究成果概要
本研究では以前から開発し,公開した OnCAL (The Online Corpus of Academic Lectures, http://www.oncal.sci.waseda.ac.jp/) を活用して,MIT やStanford 大学の講義書き起こしを詳細に解析し,英語による講義における academic spoken English の言語特徴を解析した.また,英語による論文のコーパスを構築し,論文における academic written English の言語特徴を特定し,具体的に academic spoken English とどのように異なるかを解析した.OnCAL に約 350 万語,論文のコーパスには約 230 万語が含まれる.
解析の結果,academic spoken English と academic written English との間に下記のような興味深い差異を特定した.
1.教科書に頻度が高い academic words のリストとして知られる Academic Word List に含まれる単語を,OnCAL および論文のコーパス内の頻度は,大きく異なった.例えば,academic word である obtain は同義語の get との差を調べた結果,obtain は論文では 1,877 回出現するのに対して,OnCAL には 156 回しか出現しない.Get については,論文コーパスに 260 回,OnCAL には 15,919 回出現する.論文コーパスと講義コーパスの大きさは異なっていることを考慮しても,academic spoken English と academic written English との差ははっきり現れていると言える.
2.単語(動詞,形容詞,名詞,副詞)レベルだけではなく,テキスト構造についても大きな差があることが明らかになった.論文は複数の section (Introduction, Methods, Results, Discussion, Conclusions) に分かれており,各 section は論理的に展開される.これに対して講義は,一番最初と最後の部分を除いて決まった section には分かれず,教員の教える意図は講義全体にわたる.
3.論文作成の作業に研究者が時間をかけて表現を注意深く選ぶことがることができるのに対して講義の場合準備はできるが多くの不確定要素が多く入ってくる.英語非母語話者教員は講義を英語で行う場合,講義における academic spoken English の特徴を事前に把握できるように講義中の pedagogical functions を特定して,各 function 毎に典型的な表現を特定した.