表題番号:2015K-042 日付:2016/04/08
研究課題存続可能な共有型経済の憲法論的考察
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 大学院法務研究科 教授 中島 徹
研究成果概要
本年は、持続可能性を支える基底ともいうべき土地の所有権をめぐる連続と不連続についての基礎的研究を行った。通常、現在議論の対象となる土地所有権は、近代的土地所有権である。しかし、では日本の古代から中世、そして近世に至る土地の「所有」はそれ以前のものとして今日では全く視野に入れる必要はないのか。土地所有権は、土地への資本投下がなされる農業社会において成立すると考える場合には、少なくとも墾田永年私財法が私的土地所有権成立を前提としての墾田の国家管理としての意味を持つはずである。そして、その前段階における国家的土地所有としての意味を持つ公地公民制のありようは、政治権力と土地所有の関係を墾田永年私財法と対照を示すものとして、身分制と土地所有の関係を考える視点を提供してくれるのではないかと考えた。それが近代的土地所有権へと変質していく際には、断絶面と同時に連続面があるはずである。その意味で、近代的土地所有権は、それ以前と次元を異にする観念と考えるべきなのかという基礎的問題を検討した。