表題番号:2015B-359 日付:2016/05/02
研究課題戦後アメリカのリベラリズムの淵源としての中西部における日系アメリカ人の社会統合
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 篠田 徹
研究成果概要

 本研究では、太平洋戦争中・後のアメリカが、戦争中強制収容した日系アメリカ人を、どのように地域社 会に再定住させたか、そしてこの社会包摂の過程が、戦後アメリカ社会のリベラルな体制形成とどのように関係 していたかを、ミネソタ州ミネアポリス市の事例で検討した。このため本研究では、ミネソタ歴史協会の一次資料やその他の在米図書館の諸文献を検討し、実情の把握 と分析枠組みの検討を行った。  その結果、ミネアポリスやミネソタ州には、当時日系アメリカ人を受け入れることに積極的であった政治 的指導者たちと、それを実際に担った社会組織のネットワークが存在したこと、そして日系アメリカ人の再定住 の経験やパターンが、その後アフリカ系アメリカ人やアジア系アメリカ人との人種的和解のリハーサルやプロト タイプになり、これを推進した政治的指導者たちがこのリベラルな体制を全国化、国際化したことがわかった。  今後の研究課題は、日系アメリカ人の受け入れに積極的だった政治指導者たちや社会組織のネットワーク がどのように登場し、またその後地域や全国、そして固く結びついた日米のリベラルな政治経済、社会文化体制 の確立へ向かったかを明らかにすること、そしてこの過程を媒介した日系アメリカ人の歴史的意義を考察するこ とである。