表題番号:2015B-190 日付:2016/04/05
研究課題Hamilton構造をもった数値安定なEinstein方程式の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 米田 元
(連携研究者) 早大理工 非常勤講師 土屋拓也
研究成果概要
一般相対性理論の基礎方程式であるアインシュタイン方程式は非線形偏微分方程式なので,特殊な対称性を課さない限り厳密解を得るのは難しい.特に時空のダイナミクスを追うのは,数値シミュレーションに頼るところが多い.この成果は重力波の観測成功などで大きな成果を挙げている.時空の場の方程式であるアインシュタイン方程式を時間と空間に分解したあと,離散化して数値スキームを作成する.そのときに用いられる方法は,他の方程式に特化して作成されたスキームを借用することが多い.そのため,構造保存型になっておらず,時間発展と共に拘束条件の破れが発生してしまう.そこでアインシュタイン方程式を数値シミュレーションをするための,構造保存型スキームの作成を目的として研究した.ハミルトニアンの正準形式を先に離散化し,それから時間発展方程式を求めていくという手法をとる離散変分法が知られている.この離散変分法を用いて,アインシュタイン方程式のスキーム作成に取り組んでいるが,まだ完全なものは得られていない.拘束条件つきの時間発展方程式の類題として,電磁気学の基礎方程式であるマクスウェルの方程式について,離散変分法を用いて構造保存型のスキームの作成に成功した.これは,拘束条件つきの時間発展方程式としては,初めて離散変分法を適用した例である.しかし,単に離散変分法を用いるだけでなく,様々な工夫も必要だということも分かった.これらの成果について,学会発表,論文投稿を行った.これをステップアップし,アインシュタイン方程式のスキーム作成にとりかかっている.だがマクスウェル方程式とアインシュタイン方程式では,ハミルトニアンの段階で,やや異なった構造を持っており,マクスウェル方程式で成功した離散変分法をそのまま適用するだけでは,部分的には成功するものの,完全な構造保存のスキームは出来ないことも分かった.現在その改良に取り組んでいるところである.